1歳半ごろまでに認められる口や歯の問題

この時期に認められる歯や口の問題 (第2回)          ⇒ English

1才半頃までに小児歯科医院や、健診での相談理由としては、次のようなことが挙げられます。

1.  歯が早く生えた 

前述したように歯の萌出には個人差があるのであまり心配はいりません。早い子は生まれた時に既に下の前歯が生えていたり、4カ月前に生えてきたりします(早期生歯)。この頃はまだ母乳で栄養を摂る時期なのでお母さんの乳首に歯が刺さり授乳が困難になったりします。場合によっては歯を削ったり、抜歯したりすることもあります。

2.  歯が生えてこない

これも個人差があるのであまり心配はいりません。但し、順番が飛んだりする場合にはもともと歯がない場合もあります。乳歯ではそれほど珍しいことではないので、そのまま経過観察していけばよいでしょう。全体に遅い場合は永久歯を含め、その後の歯の萌出も遅くなることがあるので覚えておくとよいでしょう。

3.  食べ物を口から出してしまう。よく噛まない。

前述のように奥歯が未萌出の場合、すりつぶしができない可能性があります。生野菜や、肉などを出してしまう子はまだ奥歯ですりつぶしができないことが多いようです。歯茎でつぶせる程度のもの(野菜は生でなく煮たもの、肉はミンチにしたもの)を食べさせ、奥歯が生えてきたら、様子を見ながら与えていきましょう。あまり早い時期にすりつぶさないと飲み込めないものを与えると丸飲み込みを誘発することがあるので注意が必要です。

4.  奥の歯茎が青く(紫色に)腫れている

これは萌出性嚢胞の可能性があります。第一乳臼歯が入っている袋が破れずにそのまま出てきた状態で、中に血液や浸出液が溜まってこのように見えます。そのまま放っておけばまもなく歯が生えてきます。

5. 歯の色、形が変だ

萌出した乳歯の形や色が異常を示す場合は形成不全の疑いがあります。乳歯は出生前、後に限らず、全身や周囲の骨などの影響を受けやすいので、形の悪い歯や黄色や茶色に着色のある歯が生えてくる場合があります。特に早期生歯ではこのようなことが起こりやすいようです。

この他、2本の歯がくっついていたり(癒着歯)歯の本数が足りなくて大きい歯が生えてきた(癒合歯)というような場合もありますが、この時期にはよく見られるので心配はいりません。

6. 指しゃぶりが止められない

1才半過ぎになっても指しゃぶりやおしゃぶりが止められない子がそのまま止めずにいると上と下の前歯に隙間が空いて咬み切れない(開咬)状態となることがあります。この時期はそろそろ自分の言いたいことを相手に伝えることができるようになるので、むやみにおしゃぶりを口に入れたり、指しゃぶりを続けると歯並びだけでなく、言葉の発達に影響が出る場合もあるので注意が必要です。

こどもは暇だったり、寂しかったりすると一番吸いやすい指を吸ってしまいます。なるべく手を使った遊びをするなり、本を読んで聞かせるなど子どもとのかかわりを増やして、手を使うようなことをたくさんさせてください。止めさせるのは大きくなってからより2才ころまでの方がすっきり止めさせられるものです。これらの癖を止めればほどんどの場合すぐに歯並びが改善されます。

7. 歯や口の周りのけが

1才ころからそろそろ歩きはじめるので、この時期は転んだり、ぶつけたりと口だけでなくけがが多いものです。口や歯以外に頭や顔など他の部分にけががなければ、できるだけ早く小児歯科を受診してください。歯や口のけがについては別の機会に詳しくお話しする予定です。

8. 歯みがきの時暴れて上手にできない。

1才児はまだ理解力や社会性が発達していないため、自の嫌なことをされると泣いて抵抗します。特にお口の中というのはとてもプライベートな場所で初めは誰でも触られるのを嫌がるもので、当然歯みがきを嫌がります。初めのうちは泣いてもあまり気にせず優しくサーっと終わらせてたくさんほめてあげましょう。そのうちに必ず泣かずにできるようになりますので心配は無用です。ただ3才までは上手に歯ブラシができない分、早い時期から甘いものを食べさせないようにすることが肝心です。歯みがきを含めたむし歯予防については別の機会に詳しくお話しします。

9.  こどもの歯を虫歯にしないためにはどうしたらよいか

前述のように乳歯は大体生後6カ月頃から生え始めます。歯が生えていなかった時には存在しなかったいろいろな細菌は歯が生えるとともにお口の中に定着してきます。このころにお砂糖の入っている食べ物(お菓子など)を与えると砂糖を分解してねばねばの物質を出す菌が歯に付着します。これが足場になって細菌が多量に蓄積し歯の表面を溶かし(脱灰といいます)ます。これがむし歯の始まりです。むし歯予防の第一歩はこどもの口にむし歯菌を定着させないことです。親にむし歯があるとむし歯菌がたくさん赤ちゃんに移りやすいので、親の口腔管理が大切です。また、赤ちゃんへの愛情表現であるあいさつ程度の口へのキスは問題ありませんが、食べ物の口移しや同じスプーンの使用は避けた方が賢明でしょう。もちろん早くからむし歯の原因となるお砂糖の入ったお菓子などを食べさせないことが肝心です。

歯科医師 工藤 真幸