こどもの歯と口

こどもの歯と口シリーズ (第1回)

札幌在住の外国の方たちにこどもの歯と口についての情報を提供します。    ⇒English

何歳になっても健康なお口と歯でおいしく食事をしたり、会話を楽しんだりできればとても幸せですね。むし歯のない永久歯、きれいな歯並びは一生の財産です。そのためには乳歯のころからのむし歯予防がとても大切です。親から子供への最高のプレゼントである健康な永久歯列をはぐくむためにはどうしたらよいでしょうか。

このコラムでは皆さんがお口について日ごろから疑問に感じたり、どうした良いか判らないことなどについてできるだけ具体的にわかりやすく説明しようと思います。また、海外と日本のシステムの違いや食生活を含む生活習慣の違いなどとお口の関係ついても紹介できればと思っています。

まず初めに乳歯、永久歯のでき方や生え方について説明します。

Ⅰ.こどもの歯と口の成長発達とよく見られる問題

1-1)おなかの中〜1才半頃までの成長発達

乳歯はお母さんのおなかにいるころ(妊娠2カ月頃)からでき始め妊娠後期になると歯の形ができてきます。お母さんのおなかの中では基本的に赤ちゃんは守られているため、環境や母体の影響は受けにくいのですが、母親や胎児が重大な病気に掛かったりするとまれに影響が出る場合があります。

永久歯は例えば6才ころ萌出するいわゆる6才臼歯(第一大臼歯)は出生時に歯の元となる歯胚が硬くなり歯の形ができ始めます(石灰化開始)。その後、順次他の永久歯も顎の骨の中で育っていきます。生まれた時やその後に病気やけがなど何か重大な出来事があったりすると、その時期にできはじめている永久歯に影響し、形や色が変わったりすることがあります。

出生後おっぱいやミルクばかり飲んでいた赤ちゃんのお口の中に生後6か月頃、きらきら光る下の前歯が生えはじめた時の感動は親御さんにとって忘れがたいものです。このころから離乳が始まり、少しずつ食べるものが増えていきます。そして1才頃には上下4本ずつ前歯がそろい、手づかみで食べ物を前歯でかじり取ることができるようになります。

一才半ころになると乳歯の奥歯が生えてくるので、食べ物のすりつぶしができるようになり、離乳完了です。栄養分はすべて食べ物からとるようになります。そろそろ何でも食べる時期となるのでむし歯の予防が重要になります。

但し、歯の萌出時期は早い子から遅い子まで個人差があるので、早い、遅いについてはあまり心配いりません。気になることがあればこの頃に保健所で行う1歳半健診で歯科医師に相談すると良いでしょう。

*1 離乳完了(いわゆる卒乳)時期について

諸外国では一般に母乳栄養完了時期についてはあまり明確に指導されていないようです。日本でもかつて4-5才頃まで母乳を与えてきたものですが、現在では栄養面や機能の発達、う蝕予防の観点から歯科の分野では1-2歳での離乳完了が推奨されています。小児科的には本人が欲しいというまで飲ませても良いとの指導もあるようです。(この項目はいろいろ意見もあるので別の機会にお話しする予定です。

*2 1歳半歯科健診について

1歳半になると、初めての歯科健診が保健所で実施されます。札幌に住民票を登録している方には全員通知が来ます。保健所の健診は出生時から始まりますが、歯科の健診はこの時が初めてとなります。場所や時期等不明なことがありましたら、最寄りの保健所に問い合わせてください。

歯科医師 工藤 真幸