人工乳を赤ちゃんに飲ませるとき

混合栄養  ⇒ English

Q: 混合栄養の場合、どういう時にどのくらい飲ませる必要がありますか?

A: 医学的には、赤ちゃんが、授乳回数や時間を制限されずに欲しがるたびに母乳を飲み、抱き方、吸い付き方が適切な状態なのに、体重増加が十分でなく、母乳分泌が少ない、と判断される時に、人工乳を使用します。また、様々な事情、希望により、混合栄養を選択することもあると思います。

混合栄養で、できるだけ母乳を与えたいが、不足分を人工乳で補いたい場合の人工乳の与え方は、個別的な支援、判断が必要なことが多いです。

一般的に、生後3か月くらいまでの赤ちゃんは、哺乳瓶の乳首が、口腔内の天井に当たると吸啜反射によって、お腹が空いていなくても、哺乳瓶の中身を全部飲んでしまうことが多いです。人工乳をあげたら飲むから、という理由で母乳で足りていない、と判断すると、母乳分泌が十分あった場合も、人工乳栄養におきかわっていくことがあります。

生後1−3か月に母乳希望だけど不足分を哺乳瓶で人工乳を飲む場合に、本当に不足分だけ人工乳にするのではなく、それより多くの人工乳を飲むと、赤ちゃんが長く寝てしまったり空腹にならないことで、授乳間隔が空いて乳房を吸う頻度や時間が減ることが多いです。赤ちゃんが吸わなければ、母乳が乳房から排出されないので、乳腺の細胞は、作るのを減らして良いサインと受け取り、母乳分泌は減っていきます。

本当に母乳の不足分に見合う人工乳を足して体重増加がよい状態と、不足分よりも多くミルクを足して(結果、母乳は減って)児の体重増加が良い状態は、見分けることが難しく、母乳育児支援をしている助産師、小児科医などへ相談する必要があります。

基本的には、児の欲しそうなサインにしたがって直接授乳をして、足りなそうなら人工乳を補足し、こまめに体重を測り、判断していくことになります。

ですから、母乳をできるだけ多く飲ませたい場合には、まず母親に乳頭や乳房の痛みがあったり、赤ちゃんが吸い付かないなどのトラブルがなく、しっかり深く吸って有効に飲みとっているかを確認します。そこが問題ないのに体重増加が不十分で、母親の搾母乳が得られない時には、補足する量を考えて、その人工乳の量で体重増加が良好に得られるかをみていきます。基本はお母さんと相談して一緒に決めます。

通常は、紙おむつにしっかり重さのある、ほとんど透明に近い薄黄色の尿が、1日に5−6回以上あれば哺乳量は十分あるはずです。布ならすぐしっとりするので、8回以上くらいでしょう。

>母乳を十分に摂取できているサイン UNICEF/WHO

  • 母乳を一日に8~12回以上,児が飲みたいだけ飲んでいる。
  • 尿: 24時間に6回かそれ以上、色が薄い尿が出る。(生後24時間以降)。
  • 便: 24時間で3~8回の排便。生後4~6週以降は排便回数が減り、一回量がふえることもある。
  • 筋緊張がよく、健康的な皮膚で、活気がある。
  • 一定した体重増加がある。
  • 身長、頭囲も大きくなっている。
  • 着ている服が小さくなっていく。

 

Q: ミルクはどのように選びますか。 

A: ミルクの選び方は、通常の日本で市販の牛乳由来の育児用ミルクに、大きな差はありません。(フォローアップミルクは、全く別物ですので、乳児期早期には使用できません)

 

Q: 日本にハラルミルクはありますか。

A: ハラルは、日本製ミルクでは、メーカーに大差なく、厳密にはどれもハラルミルクではないと思われます。豚由来の成分、タウリン(牛胆汁由来)が含まれているはずです。

日本のハラルミルクに関してはSEMIのホームページを参照してください。

サプリメントの相談

Q: 乳幼児にビタミンDや鉄の補給は必要ですか?

A: ビタミンDについて

北海道は高緯度地方で、真夏以外は、皮膚での十分なビタミンD合成は期待できません。魚やきのこ類などをしっかり食べられるようになるまで、秋、冬、春には、ビタミンD補充を勧めます。

詳細は、SEMI Sapporo のホームページをご覧ください。
https://semi-sapporo.com/afterbirth/vitamin-d-deficiency/

A: 鉄について

鉄は、通常、正期産児であれば6か月までの分は胎児期に母親から受け取ります。

およそ生後6か月から開始する補完食で、吸収の良いヘム鉄を含む赤身の肉、魚を食べさせましょう。

人工栄養メインの場合、ミルクに鉄は付加されており、鉄不足の心配は少ないです。

母乳栄養児でもルーチンの鉄補充は不要です。また、母体の貧血と赤ちゃんの鉄不足に関連はありません。

補完食が極端にすすまない場合で、人工乳は飲んでいないか少量の場合、鉄不足のリスクは高くなります。健診などで相談し、鉄欠乏がないか検査を受けましょう。

早産児や、赤ちゃんに厳格なヴィーガンやベジタリアンの食事をさせる場合、鉄不足、貧血のリスクは高く、検査を受けることが勧められます。

参照:人工乳の調乳方法(FAO/WHO)

小児科医 川真田 伸子