ビタミンD欠乏症にならないために

ビタミンD 欠乏症  ⇒ English

北海道は高緯度に位置しているため、冬の間は太陽光の強さが比較的弱くなります。東京の太陽光の強さを1とすると、札幌はたったの1/3です。多くの人が紫外線による癌の影響を心配しますが、多くの人が直射日光を避けていますし、出来る限り肌のすべてに日焼け止めクリームを塗って紫外線を防ごうとする人もいます。また、屋外よりも室内で働いたり遊んだりする方が好きな人もいます。これらが要因でビタミンD欠乏症を引き起こします。

カツオ、サケ、マス、サンマ、サバやキノコなどの食物は、ビタミンDを豊富に含みますが、食品から摂取できるビタミンDの量はとても少ないです。母乳に含まれるビタミンDの量は非常に少なく、赤ちゃんがビタミンDを多く含む食品を食べる量が少ないため、母乳で育つ赤ちゃんが口からビタミンDを摂取することはさらに難しいです。

 

ビタミンD欠乏症が引き起こす病気

ビタミンDが欠乏すると、子供ではくる病や骨軟化症、大人では骨粗鬆症が現れます。子どもの場合、痛みのために歩行に困難になったり、足の骨が曲がってしまったりします。大人の場合は、圧力により背骨が骨折し、まっすぐ立っていることが困難になります。ビタミンDは、骨の病気だけでなく、糖尿病や高血圧、癌を予防します。

 

ビタミンDが必要な人は?

太陽の光が弱いため高緯度に住む人の皮膚に含まれるビタミンD量は、少ないです。授乳中の母親は多くのビタミンDが必要です。乳児と子どもは、身体の成長のために比較的多くのビタミンDが必要ですが、口から摂取するだけでは必要量を補うことは出来ません。老人の場合、肌におけるビタミンDの生成、腸からの吸収、腎臓と肝臓で活性化されるビタミンDの吸収は非常に弱いです。

北アメリカで報告されるビタミンD欠乏症の多くはアフリカ出身者の祖先をもつ方々です。メラニン色素が肌に対する太陽光の影響を弱めるため、肌のビタミンD生成が小さくなります。彼らの食習慣、生活習慣もビタミンD欠乏症を助長させます。

 

ビタミンDの必要摂取量

1歳までは1日400IU、1歳から70歳までは600IU/日、71歳からは800IU/日です。

 

食品に含まれるビタミンD

鰹(カツオ) : 400IU/100g,

鰹節(かつおぶし) :430IU/100g,  

鮭(さけ)と 鱒(ます) :200IU/100g,

秋刀魚(サンマ) :340IU/100g,

鯖(サバ): 300IU/100g,

鰤(ブリ): 360IU/100g,   ハマチ :20IU/100g, 

シラス   : 200IU/100g,

鰈(カレイ) : 60IU/100g ,

鱈(たら), 鰊(ニシン), 鮪(マグロ): それぞれ順に 30, 40, 20IU/100g  

卵黄(らんおう): 160IU/100g ,

牛モツ (牛の心臓と腎臓 ) : 10-30IU/100g,

豚の肝臓 : 110IU/100g,

生シイタケ : 90IU/100g 

 

ビタミンDを補うには?

日光浴不足の状況下で毎日のビタミンD必要摂取量すべてを食品から摂取するためには、毎日大量の魚を食べなければなりません。食べる必要のある量を考えると、キノコ類からの摂取量は大変少ないです。AAP (アメリカ小児学会)では、ビタミンDサプリメントの使用を推奨しています。もしあなたの赤ちゃんが母乳栄養のみの場合。ビタミンD摂取量は、一日の必要摂取量400IU/日には遠く及びません。通常母乳に含まれるビタミンDは、母体のビタミンD蓄積量によって異なり、0.6 から 3.0 μg (36-200IU)です。

 

ビタミンDサプリメント

様々なボトル入りシロップがあります(アメリカでは一滴400IU、日本では1滴80IUと200IU)。乳頭や指にシロップを塗って赤ちゃんに吸わせると簡単にビタミンDを与えることができます。

 

ビタミンDの過剰摂取

0~6か月齢で1000IU/日、7~12か月齢で1500IU/日、1~3歳で2500IU/日以上を摂取した場合は過剰摂取を心配しましょう。以上の方法で赤ちゃんにビタミンDを与えた場合は、過剰摂取を心配する必要はありません。使用する商品のビタミンD含有量に気を付けましょう。

 

一般の方が普通に食事をとっている場合であっても、ビタミンD摂取量は1日の必要量を満たすことができません。

北海道では、冬季間、ビタミンDを豊富に含む食品を食べましょう。

授乳中の方は、より多くのビタミンDを摂取しましょう。

肌に直射日光を当てましょう、ただしジリジリするまであてる必要はありません。

赤ちゃんには十分に日光浴させましょう(特に冬場)。

ビタミンD欠乏症が心配な方は、ビタミンDサプリメントを試してみましょう。

 

小児科医 川真田 伸子