むし歯の原因とその予防法

こどもの歯と口(第3回)

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前回投稿後、皆さんもご存知のように日本中で新型コロナウイルスの感染拡大があり、私たちの『日常』生活が大きく変化し、私のコラムも中断を余儀なくされました。この数か月で大きく変化した『日常』ですが、お父さん、お母さんの子育ての毎日は変わらず楽しくお暮らしのことと思います。

私たち大人にとっても変化の多い数か月でしたが、赤ちゃんにとっては立てるようになったり、歩けるようになったり、歯が生えたたり、とても大きな変化(成長・発達)をもたらしていることでしょう。

社会とのかかわり方が大きく変化している中、毎日の子育てに少しでもお役に立つ情報を提供できればと思います。

今回は「むし歯の原因とその予防法」についてです。

【むし歯の原因とその予防法】

1) むし歯の原因

むし歯の原因として従来より①歯の質、②(むし歯の原因となる)細菌、③砂糖の3つが挙げられていますが、これに④時間を含めた4つの条件がそろうとむし歯ができることが知られています(下図)。

1.歯の質

生えたての歯はまだ表面のエナメル質が柔らかく、口の中のカルシウムが表面に取り込まれることによって硬くなることが知られています(いわゆる成熟化)。つまり生えたての歯をいかに丈夫にするかがその後のむし歯予防に影響するということです。また、生まれつきエナメル質がうまくできていない(エナメル質形成不全)の場合、よりむし歯になりやすいと考えてよいでしょう。

2.むし歯の原因となる細菌

むし歯の原因菌として一番重要となるミュータンス菌は③で原因として挙げている砂糖を餌として、表面にねばねばしたものを出して歯の表面に付着します。そこから細菌が次々と増え酸を出して歯を溶かすことによりむし歯が始まります。

3. 砂糖(甘いお菓子やジュースなど)

2番のミュータンス菌の餌になるのがお砂糖です。普通の食事にもある程度の砂糖は入っており、また、砂糖自体は体のエネルギー源として重要ですが、おやつに砂糖がたくさん入ったあめ、キャラメル、グミやジュースなどの甘い飲み物を多く摂るとミュータンス菌が増え、むし歯の原因になります。お菓子やジュースをたくさん食べている子の唾液はべたべたしていて、ブラッシングをしても細菌の塊であるプラークを取りきることが難しくなりむし歯ができやすくなります。

4.時間と唾液

汚れがたくさんついた状態が長い時間続くと②で説明したようにミュータンス菌が多く歯の表面にプラークがこびりつき長い間付着するためそこからむし歯になります。

また、唾液の中には食後一旦酸性になった口の状態を中性に戻す作用がありますが、時間を決めずにだらだらと食べていると唾液の作用が働かず口の中が酸性になり歯が溶けてきます(脱灰)。おっぱいやミルクそれ自体はそれほどむし歯になりやすいものではないのですが、飲んだまま寝てしまうと、寝ている間は唾液が少ないため歯の表面が溶け出してきます。

2)むし歯予防

むし歯の原因を取り除くことが予防となります。

1.歯質の強化

歯の表面にフッ化物を塗布するとエナメル質の基であるハイドロキシアパタイトが硬いフルオロアパタイトという構造に変化し、むし歯予防効果が発揮されます。特に生えたての歯はむし歯になりやすく、またこどもの歯は次々に生えてくるのでむし歯予防のためには定期的にフッ化物を塗布する必要があります。

フッ化物は自然界のあらゆるものに含まれ、そこに生育する野菜、果物、魚介類などすべての食品に含まれています。日本では一般的に飲料水中に含まれるフッ素濃度は低いため、食品からの摂取とは別にむし歯予防のためにフッ化物の使用が推奨されています。むし歯になりやすいお子さんはフッ化物の家庭での使用(塗布や洗口)も併用するとよいでしょう。

2.プラークの除去

食後の歯には食べかすだけでなくそれを餌とする細菌が増え、プラークとして表面についています。プラーク除去の基本は歯ブラシやフロスによる歯のお掃除です。最近はお子さんのブラッシングが定着してきて、以前のように歯をみがかない子は少なくなっていますが、ブラッシングをしているつもりでもみがき残しがある場合が多く、また、年齢によって歯みがきの注意点も異なるので、歯医者さんで指導してもらうとよいでしょう。①のフッ化物の塗布も歯への細菌付着を少なくする効果があります。

3.間食(おやつ)の与え方

こどものおやつは基本的には食事の一環として考えてください。おとなは胃が大きいので一日2食か3食で十分で、おやつはちょっとした気分転換の意味で甘いものなどを食べることが多いのですが、小さいこどもの場合、少し前まで一日何回もおっぱいやミルクを飲んでいたのですから、一気に一日3食では胃も小さくて栄養的にも不足します。そのため食事を補うため食事の間に1,2回の間食(補食)が必要になります。こどものおやつは3度の食事で足りなかったものを取るよう心がけましょう。たとえば食事で摂れなかった芋類や季節の野菜や果物、小さなおにぎりや軽食でもOKです。おやつ=甘いものと考えていると、カロリーだけ充足し、栄養が不足する場合があり、また、むし歯の原因にもなります。

甘いものはすぐに脳に満腹感が伝わりますが、おなかの持ちが悪いのですぐに空腹になって、だらだら食べの原因となりひいてはむし歯になりやすくなります。また、気分の変化が激しく、落ち着きのない子になるとの報告もあります。

歯科医師 工藤 真幸